自己破産は借金の返済義務を免除してもらう最終的な債務整理方法です。手続きは複雑ですが、正しく理解すれば新しい人生のスタートを切ることができます。
自己破産の基本的な仕組みと種類
自己破産は、裁判所に申し立てを行い、すべての借金の返済義務を免除してもらう債務整理の方法です。債務者の財産を換価して債権者に配当した後、残った借金については免責許可を受けることで、法的に返済義務がなくなります。
自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2つの手続きがあります。同時廃止は、めぼしい財産がない場合に適用される簡易な手続きで、破産手続開始決定と同時に手続きが終了します。一方、管財事件は、一定の財産がある場合や免責不許可事由がある場合に適用され、破産管財人が選任されて財産の処分などを行います。
自己破産の要件は、「支払不能状態」にあることです。これは、債務者が債務を一般的かつ継続的に返済できない状態を指します。単に一時的に支払いが困難な状況では、自己破産は認められません。
手続きの開始から終了まで、同時廃止の場合は約3〜6ヶ月、管財事件の場合は約6ヶ月〜1年程度かかります。この期間中は、裁判所からの呼び出しに応じる必要があり、居住地の移転や長期間の旅行には制限があります。
自己破産が認められると、税金や養育費などの非免責債権を除いて、すべての借金の返済義務がなくなります。これにより、経済的に完全に立ち直ることができ、新しい人生をスタートできます。
自己破産の手続きの流れと必要書類
自己破産の手続きは、まず弁護士への相談から始まります。弁護士は債務者の状況を詳しく聞き取り、自己破産が最適な方法かどうかを判断します。他の債務整理方法で解決できる場合は、そちらを提案することもあります。
必要書類の準備には時間がかかるため、早めに取りかかることが重要です。主な書類として、破産申立書、陳述書、家計の状況を示す書類、財産目録、債権者一覧表などがあります。
身分関係の書類では、住民票、戸籍謄本が必要です。収入関係では、給与明細書(直近3ヶ月分)、源泉徴収票、確定申告書控え、年金受給者の場合は年金証書なども必要となります。
財産関係の書類は特に重要で、預貯金通帳のコピー(過去2年分)、不動産登記簿謄本、生命保険証券、退職金見込額証明書、自動車の査定書などが必要です。99万円以下の現金や生活に必要な家財道具は自由財産として手元に残すことができます。
債務関係では、各債権者からの請求書や契約書、取引明細書、クレジットカードの利用明細などを準備します。借入の経緯や使途についても詳しく説明する必要があります。
申立書類が完成したら、管轄の地方裁判所に提出します。同時に予納金を納付しますが、同時廃止の場合は約2万円、管財事件の場合は20万円以上必要となります。
申立後、裁判所から破産手続開始決定が出されます。同時廃止の場合はすぐに免責手続きに移行し、管財事件の場合は破産管財人が選任されて財産の調査や処分が行われます。
最後に免責許可決定を受けることで、借金の返済義務がなくなります。ただし、免責不許可事由がある場合は、裁判所の裁量により免責が認められない場合もあるため、正直に事実を申告することが重要です。
手続き中は、郵便物が破産管財人に転送される場合があります。また、一定の職業に就けない資格制限がありますが、免責許可決定により復権し、制限は解除されます。